某大手金融機関A氏(1)

中央官庁出身で、現在は某金融機関にお勤めのA氏(30代半ばに転職し、8年ほど経過)にインタビューを行いました。会社の管理方針上、身元などが分かるような情報は出せないとの前提ですが、前回と同じく民間企業における政府渉外の仕事や役所との違い、キャリアチェンジにあたって参考となるお話などを伺いました。(その1)

 

-まず、現在のお仕事について教えてください。

大きくわけると二つあって、一つは役所の政策を使ってビジネスを行うというものです。例えば企業がお金を借りる場合に政府からの支援として金利を一定程度支援してもらえたり、補助金がもらえたり、あるいは税制優遇があったりといろんな支援ツールがありますが、これを理解してビジネスの現場で活用する手助けを行います。

 

もう一つは、国の組織やまわりの独立行政法人などを顧客とするビジネスです。例えば、何らかの政策実施において基金をつくったりする場合だと多額の資金が動くので、そこに金融機関としてお手伝いするという仕事があります。

 

そういうわけで霞が関にもよく行きますし、逆に客先(民間企業)に出かけることもよくあります。新しい国の機関ができたりする場合には、所管省庁やその設立準備室にいくということがありますが、その際には役人時代の土地勘が活きます。どこに訪問するべきかは当然のこと、予算の検討スケジュールなど(国の予算がいつどのように決まるか)、いま役所は何を考えているのか、どのようなステージにあるのかをきちんと判っていることが重要です。

 

例えば政策検討している6-7月、概算要求が終わった9月、今の時期(2-3月)のように予算が決まって執行を考える時期など、時期に応じて役人として考えることは変わってきますが、そういうことが判って話ができるかどうかは結構大きいというか、判っていないとちゃんと相手にされないこともありますので。

 

-役所時代との仕事の違いややりがい・面白さなどはいかがでしょうか?

一言でいうと、最後の結果が見えるということですね。政策ツールを実際に使ってお客さんがどうなるかというところがわかる、最終的な政策の出口が見えるという点です。

 

今までで一番記憶に残っている話でいえば、お客様である中部地方のドラッグストアのチェーンが、政策ツールを使って地域のお年寄りの健康増進のための取り組みを行うモデルプロジェクトの補助金をとった事例があるのですが、実際に現地を見に行かせていただくと制度を活用したプログラムでお年寄りの方が生き生きと活動していて、国の制度をうまく活かすことができたと実感できたことですね。

 

あと、東日本大震災や熊本の大地震があったあと、復興補助金の申請支援をしたこともあります。地域の中小企業だと補助金のことをよく知らないですし、申請書の書き方もわからない。そこに対しこの補助金はこういうもので、こういう場合に貰えますよと分かりやすく説明してあげたり、申請書を代行して書いてあげることはできないけれど書いてきたものを見てアドバイスしたりして、その後実際に補助金が支給されて店が再建され、営業が再開されたのを見たりすると、手ごたえを感じます。

 

そもそも一般の方は補助金申請などについてほとんど知らなくて、「ここの欄は何を書けばいいのか?」など、自分たちからすれば読めばわかると思うけれど、実際には読んでもわからない。と言うか、そもそも一般の人はあの字だらけの公募要領とか見るとそれだけで読む気を無くしちゃう。判っているほうからすれば公募要領の構成なんて大体同じなので、どの部分だけ見ればいいかなど、しっかり読まなくてもぱっと判るんですけどね。会社の中で役所のことを判る人は自分以外にいないから、そういう意味でとてもありがたがってもらってます。

 

あとこれは少し微妙な話ですが、民間に来て思うのは、役所のように偉い人のための想定問答やあいさつ文の作成、大して関係のない報告書の合議(内容確認)など、「くだらない」発注がほとんどないです(笑)。当然ですが、儲けにならないことは基本的にやらないとはっきりしていますし、目的や意味が見えない仕事はあまりない。これは精神的に結構大きな違いですね。

(2017.2.15 聞き手:後々朋広)